洋楽耳に心地よい Stay / Lisa Loeb
ある企画で、何でもいいから人前で好きなことを30分話してほしい、と言われた。はたして自分が他人に何を話せるだろうと考えて、すぐに思いついたテーマは「洋楽」だった。そして、それ以外は何も思いつかなかった。洋楽なら30分話せる。いや、話せるじゃなくて、能動的に話したいのかもしれない。というわけで、近い将来洋楽について話すことになるかもしれないので、事前にブログにネタを綴っておきたいと思う。
ところで、お前は洋楽を他人に語れるほど詳しいのか、と問われれば、残念ながら答えはNOだ。レコードもCDもほとんど持っていないし、最新の音楽事情にも疎い。英語も全然できない。好きな曲も音楽マニアから見ればベタなものばかりだろう。偉そうに能書きを垂れるような資格はない。ではなぜ語るのかいうと、洋楽を聴かない人に、その良さを少しでも知ってもらいたいからである。自分も昔は洋楽を聴かなかったし、むしろバカにしていた節すらある。しかし、洋楽を聴けるようになると、音楽に関する視野が一気に広がり、無限大の世界が開拓される。過去・現在・未来の曲を漁り続けても決して尽きることはない半永久的に楽しめる趣味となる。
たったひとりでもいいから、このブログをきっかけに洋楽に興味を持ってもらえれば、この上ない幸せである。
と、書いたものの、洋楽を毛嫌いしている人、もしくはJ-POPしか聴かない人に無理やり洋楽を聴かせても余計に嫌いになるだけである。Scatman JohnやShampoo、O-Zoneなどを一時的に許容することがあったとしても、基本的には洋楽は洋楽止まりである。J-POPを超えて興味を持つレベルになるには、まず耳(もしくは脳)が洋楽を受け入れられる態勢になっていないといけない。これを便宜上「洋楽耳」と呼ぶが、自分もこの洋楽耳を手に入れるまでにずいぶん時間がかかった。
私事で恐縮だが、洋楽はMariah CareyとCarpentersくらいしか知らなかった頃、当時好意を寄せていた女性から一枚のアルバムを貸してもらった。Lisa Loebの『Tails』である。
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洋楽に興味はあったものの、まだ洋楽耳になっていなかった自分はあろうことか一曲目を聴いただけで飽きてしまい、そのまま放置してしまった。普通、好きな人から勧められた音楽なら多少趣味に合わなくてもひととおりは聴くものだろう。それくらい、当時の自分は洋楽を受け入れる準備ができていなかったのだ。
それから一年ほど経った後、その女性から「あのアルバム聴いた? 聴かないならもう返して」となかば呆れられながら催促されたので、慌てて聴き直してみたところ、洋楽が苦痛ではなくなっている自分に気付いた。いつの間にか洋楽耳になっていたのだ。
といっても決して突然変異を起こしたわけではない。この一年の間、自分は洋楽を中心にかけるFMラジオを日常的に聴くように心掛けていた。寝ても覚めても、車内でも自宅でも、だ。それが、まるでスピードラーニングのように徐々に自分の耳と脳の状態を変え、洋楽の受け入れ態勢を整えていったのだと思う。
前述のLisa Loebの『Tails』のラストを飾る"Stay"を聴いたとき、なんていい曲なんだろう、こんないい曲ならもっと早く聴いておけばよかった、と思ったが、あの時点ではまだその良さを理解することはできなかったかもしれない。
生まれつき難なく洋楽を聴ける人もいれば、自分のようにあるタイミングで初めて受け入れられるようになる人もいるだろう。もしあなたがまだ洋楽耳を持っていないのであれば、洋楽だけを延々と聴き続けるのではなく、まずは洋楽・邦楽・トークで構成されたFMラジオで徐々に慣れていくのもひとつの手である。