職場でも万年筆を

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これまで日記や手紙を書くことにしか使ってこなかった万年筆を、今年からは職場でも使うことにしました。せっかく高いお金を出してそろえた万年筆を自宅だけで使っているのは宝の持ち腐れだし、好きな筆記具を使うことで仕事に対する意識も少しは高まるはず。どうせするなら楽しく仕事しなくちゃ!

もっとも筆圧の関係で複写紙に書く時には使えないし、紙質によってはインクが滲むだろうし、お客さんに貸す時も敬遠されることが少なくないだろうから100%万年筆だけで事足りるわけではないですが、ボールペンはあくまでもサブにとどめ、メインの筆記具は万年筆です。

インクは色彩雫Kobe INK物語などのあざやかなものを……と行きたいところでしたが、耐水性や提出先を考えると古典BBかブルーの顔料インクが現実的。手元にあるのはサリックス、ペリカンBB、青墨、レジストラーズインクといった面々ですが、とりあえず最初は染料インクながらなぜか耐水性抜群でそのうえコストパフォーマンスにも優れているPILOTのブルーブラックを選びました。急なインク切れにもカートリッジで対応できますしね。

パイロット 万年筆インキ INK-70-BB 70ml ブルーブラック

パイロット 万年筆インキ INK-70-BB 70ml ブルーブラック

 

 

肝心の万年筆は、自分が持っている万年筆の中ではもっともフォーマルだと思われるカスタムヘリテイジ912を使うことにしました。愛用しているセーラーの万年筆に比べると優等生的で面白みはないですが、そのぶん確実に仕事をこなしてくれることでしょう。容量の大きいCON-70ならインク切れの心配も少ないですしね。もちろんこれ一本だけでは寂しいので、他にも金ペン・鉄ペンを適宜2、3本ほど置いておくつもりです(こちらには色鮮やか系のインクを入れて)。

 

本当は宛名書き用にエラボーとか、小回りの利くキャップレスがあればもっと仕事がはかどるんだけどなぁ(感嘆)。

未年の回顧と申年の抱負

2015年12月14日、二十代の頃から抱いていた「FMラジオで音楽番組をやる」という途方もない夢が叶った。企画・構成・選曲を自分でこなし、小林克也ばりの提供読み、さらには憧れだった後の番組のパーソナリティとのクロストークまで実現することができた。トークの拙さは仕方のないところだけど、自分としては相当な満足感を得ることができたし、何よりとても楽しかった。偶然(と少しの努力)の産物とはいえ、夢って持ち続けていたら意外に叶うものなんだとわかった。これが2015年の最大のニュースだ。

また、新しく俳句という趣味が増えた年でもあった。毎週のように兼題を詠んでいくうちに自分の句が雑誌に掲載されたり、かの夏井いつき先生に添削してもらえたりとそれなりの爪痕は残せたと思う。夏井先生にご教示していただいた「あえか」という語句は恥ずかしながらこの歳にして初めて知った言葉だった。美しくかよわげなさまを表す形容動詞だが、はたしてこの言葉を上手に使える日が来るのだろうか。まだまだ精進が必要だ。なお、自分が今年詠んだ句でいちばん気に入っているのは「下露の落つる揺らぎに蝶去りぬ」だが、残念ながら評判はよくない。世間との価値観のズレを痛感する。

万年筆はプロフェッショナルギアとカスタムヘリテイジ912とプロフィット21とカスタム74(×2本)が増えた。逆にコクーンとプレラとカクノとペリカーノJr.は手放した。完全に金ペン中心にシフトしている。いま手元にある鉄ペンは、名入れしたものとカキモリオリジナルだけ。インクは数えきれないほど増えた。でも、目標どおり色彩雫をコンプリートすることはなかったのでそこだけは褒めたい。オブザイヤーを選ぶとしたら、万年筆はプロギア、インクはSTORiAのLionあたり。総じて充実した万年筆ライフを送れた一年だった。

しかし、ポジティブなニュースはこれくらいで、あとは概ね大殺界らしい負の一年となった。何よりもつらかったのは飼っていたハムスターの死だ。寿命的に2015年いっぱいだろうと覚悟はしていたが、幸か不幸か心臓が止まる最後の瞬間まで看取ることになり、その時の映像が脳裏に焼き付いて離れない。思えば、これまで死に立ち会ったことはあっても、命が絶えるその瞬間に立ち会ったのは初めてのことだ。以前ハムスターを亡くした時もそうだったが、「はたして自分に飼われて幸せだったのだろうか」という本来は考えるべきではないであろう自問から逃れることができない。生き物を飼うというのは非常に重い責任を背負わなければならないんだと再自覚した。

また、いろんなモノが壊れた一年だった。車のバッテリーの寿命が尽きたのはまだしも、MacBook Airのバッテリーが死んだのは痛かった。しかもまだ交換していないので、常に電源コードを接続していないとコンピュータとしての体をなさない状態になっている。なぜ交換しないのかというと、この機にそろそろ新しいMacを買ってもいいんじゃないか、と自分の中の悪魔がささやいているからだ。しかし、あまり外でMacを使っていない現状(と財布事情)を鑑みると、今のままでも生活に「直ちに影響はない」と、政治家のように考えてしまう。ただ、モノが立て続けに壊れるのは新しい人生を迎える準備とも考えられるので、2016年こそはポジティブに思考していきたい。 

申年の目標は、何はともあれスーベレーンM800緑縞を手に入れることだ。といっても単に資金を貯めるということではない。一本一本の万年筆に物語を込めている自分は、スーベレーンに「試験合格」という物語を込め、日夜勉強に勤しんでいる。たとえ宝くじが当たっても、おいそれとは買えないのが万年筆なのである。

洋楽耳に心地よい Stay / Lisa Loeb

ある企画で、何でもいいから人前で好きなことを30分話してほしい、と言われた。はたして自分が他人に何を話せるだろうと考えて、すぐに思いついたテーマは「洋楽」だった。そして、それ以外は何も思いつかなかった。洋楽なら30分話せる。いや、話せるじゃなくて、能動的に話したいのかもしれない。というわけで、近い将来洋楽について話すことになるかもしれないので、事前にブログにネタを綴っておきたいと思う。

ところで、お前は洋楽を他人に語れるほど詳しいのか、と問われれば、残念ながら答えはNOだ。レコードもCDもほとんど持っていないし、最新の音楽事情にも疎い。英語も全然できない。好きな曲も音楽マニアから見ればベタなものばかりだろう。偉そうに能書きを垂れるような資格はない。ではなぜ語るのかいうと、洋楽を聴かない人に、その良さを少しでも知ってもらいたいからである。自分も昔は洋楽を聴かなかったし、むしろバカにしていた節すらある。しかし、洋楽を聴けるようになると、音楽に関する視野が一気に広がり、無限大の世界が開拓される。過去・現在・未来の曲を漁り続けても決して尽きることはない半永久的に楽しめる趣味となる。

たったひとりでもいいから、このブログをきっかけに洋楽に興味を持ってもらえれば、この上ない幸せである。

と、書いたものの、洋楽を毛嫌いしている人、もしくはJ-POPしか聴かない人に無理やり洋楽を聴かせても余計に嫌いになるだけである。Scatman JohnやShampoo、O-Zoneなどを一時的に許容することがあったとしても、基本的には洋楽は洋楽止まりである。J-POPを超えて興味を持つレベルになるには、まず耳(もしくは脳)が洋楽を受け入れられる態勢になっていないといけない。これを便宜上「洋楽耳」と呼ぶが、自分もこの洋楽耳を手に入れるまでにずいぶん時間がかかった。

私事で恐縮だが、洋楽はMariah CareyCarpentersくらいしか知らなかった頃、当時好意を寄せていた女性から一枚のアルバムを貸してもらった。Lisa Loebの『Tails』である。 

Tails

Tails

 

洋楽に興味はあったものの、まだ洋楽耳になっていなかった自分はあろうことか一曲目を聴いただけで飽きてしまい、そのまま放置してしまった。普通、好きな人から勧められた音楽なら多少趣味に合わなくてもひととおりは聴くものだろう。それくらい、当時の自分は洋楽を受け入れる準備ができていなかったのだ。

それから一年ほど経った後、その女性から「あのアルバム聴いた? 聴かないならもう返して」となかば呆れられながら催促されたので、慌てて聴き直してみたところ、洋楽が苦痛ではなくなっている自分に気付いた。いつの間にか洋楽耳になっていたのだ。

といっても決して突然変異を起こしたわけではない。この一年の間、自分は洋楽を中心にかけるFMラジオを日常的に聴くように心掛けていた。寝ても覚めても、車内でも自宅でも、だ。それが、まるでスピードラーニングのように徐々に自分の耳と脳の状態を変え、洋楽の受け入れ態勢を整えていったのだと思う。

前述のLisa Loebの『Tails』のラストを飾る"Stay"を聴いたとき、なんていい曲なんだろう、こんないい曲ならもっと早く聴いておけばよかった、と思ったが、あの時点ではまだその良さを理解することはできなかったかもしれない。

生まれつき難なく洋楽を聴ける人もいれば、自分のようにあるタイミングで初めて受け入れられるようになる人もいるだろう。もしあなたがまだ洋楽耳を持っていないのであれば、洋楽だけを延々と聴き続けるのではなく、まずは洋楽・邦楽・トークで構成されたFMラジオで徐々に慣れていくのもひとつの手である。